樋口範雄 / Norio Higuchi
(東京大学公共政策大学院教授・法学政治学研究科教授)
アメリカの医師国家試験の問題を見ると、倫理に関する設問では、例えば移植に関して、法律の判断では本人の意思が採用されます。一方医療倫理では家族の意思を尊重することとなっています。つまり法律通りにやれば医者として正解だという話はアメリカにはないのです。法律だけで医療を説いていません。
日本では終末期の問題として「安楽死」「尊厳死」に関する事例がありますが、患者を見守ってきた人ではない法律家が最後の場面だけ出てきて「殺人の疑いがある」と脅すのです。アメリカのような最低ラインを定める法律に基づく医療倫理の基盤が無い日本において、法に頼るというのは危ないのではないでしょうか。
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